前夜、宿で準備を終えたあとに確認した天気予報は、雨。

予報通りの雨に、厳しいレースになることを覚悟しました。
250人が安達太良スキー場のスタートラインに整列。



午前6時にスタート。制限時間は13時間。

スタート直後、早速滑りやい路面の洗礼受けました。
粘土質の土がランナーに踏まれて、よく滑るのです。

広いゲレンデの先行者が歩いていないエリアをなんとか登りきり、
長い長いドラマが始まりまりました。



このレースは4度、ピークを超えます。
まず1度目のピークまで。
体調もいいし、新調したモンベルの雨具上下もいい感じ。



最初のピークに到着。まだまだ余裕。


ここから、1.5度目のピークまで短い下リがあります。
距離は短いけどこの区間の下りが、このレースで一番大変でした。
(他のランナーたちも同じように苦戦したようです)。

とにかく、ドロドロ、ネチャネチャの足元がよく滑るのです。
まともに歩くことさえできないのに、
速いランナーに後ろから煽られるものだから、余計に滑る。

いくら工夫しても転び続け、
切り株に太ももの外側を痛打し、一時はリタイアすら考えました。
(新調した雨具のパンツが破れてしまった!)


難所を抜けた先に1.5度目のピーク、和尚山。
奥にうっすら見えるのは、名峰磐梯山です。


しばらく、背の低い松が茂る悪路が続きます。


途中、こんな川も渡ります。
この川は石筵川といい、かつて、友人と渓流釣りで訪れています。



長く走れる下り区間を集団できもちよく疾走して、
銚子ヶ滝エイドに到着。

抜きつ抜かれつしてきた小麦色女子と記念撮影。
この格好で泥んこ区間を通過してきたとは!



時刻は9時,ざっくり予想していた範囲ギリギリでした。
プランを変更し、足元が滑らなければ、
上り区間でも積極的に走ることに決めました。

比較的緩い上り勾配をしばらく歩くと、急に視界が広がりました。


どうやら、前半の絶景ポイント船明神山らしい。
雲が抜け、青空がのぞき、気持ち良い風が吹いていたので、
自然と笑顔になりました。



 

帰りにタクシーをシェアした女性は、
このレースを4度走っているそうです。
最初のきっかけは高村光太郎の妻、智恵子の詩だったとか。
「安達太良には本当の空がある」
福島の小学生だった時、何かで耳にしたような気がして、調べました。


  智恵子は東京に空が無いといふ。
  ほんとの空が見たいといふ。
  私は驚いて空を見る。
  桜若葉の間(あいだ)に在るのは、
  切っても切れない
  むかしなじみのきれいな空だ。
  どんよりけむる地平のぼかしは
  うすもも色の朝のしめりだ。
  智恵子は遠くを見ながら言ふ。
  阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
  毎日出ている青い空が
  智恵子のほんとうの空だといふ。
  あどけない空の話である。

雨も上がりの真っ青な空に白い雲がとてもきれいでした。


第二エイド、沼尻口に到着。
痛打した痛みも少なくなり、絶好調です。



11時30分にエイド出発。
気分よく下っていくと、硫黄温泉の臭いがする
ダイナミックな風景が広がります。湯の華採取場跡。

 

この後は、ゴツゴツと岩や石が露出する斜面を登ります。
旧な斜面では、立ち止まって休憩後するランナーもいましたが、
僕は汗を流して気分よく登っていくことが出来ました。

胎内岩くぐり。太めの人だと引っかかるほど狭いです。


振り返り、湯の華採取場を眼下に見下ろします。



三度目のピーク、鉄山。


箕輪山に向かって緩やかに下るトレイルを見て、
気分が良くなっちゃいました。


ここから最終エイドまでは、ほぼ下り。
コース説明会では気持ち良く走れる、と紹介されていたけど、
滑りやすい路面なので、トレイル初心者の僕には大変でした。
疲労も出てきたので、安全走行で慎重に進みました。
途中、こんな場所も。



最終エイドには13時45分に到着。
これは想定よりもだいぶ良いペース。
腰を下ろして、しっかりと休憩しました。




普通に行けば、ゴールまでは約3時間かかるらしい。
制限時間は19時だから、14時に出発した自分には5時間ある。

完走を確信しました。
あとは、徐々に疲労していく過程を存分に楽しむことができる。

去年、野辺山ウルトラの後半に感じた感覚と同じで、
長い距離が好きな理由はこれかもしれません。
自分にまつわる現在過去の色々なことを考えて前進していく。


途中、川を何度も渡り、渓流沿いの斜面を鎖を握って歩いたり、
アドベンチャーなコースを慎重に進むと、くろがね小屋という
通年営業の山小屋に至ります。

そこから、最後にもう一度安達太良山に登ります。

遠く、山に張り付くように見えるランナーたち。


疲れをはっきりと自覚するようになりましたが、
ムスメのことを考えてニヤニヤしたり、
ゴールシーンを想像してニヤニヤしているうちに、
最後のピークに着いてしまった!

振り返ると、我が故郷、福島盆地が西陽に照らされていました。



コース案内のボランティア、

「あとは下るだけですよ。」


終わる喜びと、終わる淋しさを感じながら、
ゴール目指してひたすら下っていきました。

ゴールはスタート地点と同じ、安達太良スキー場です。

林道を走っているとき、スキー場のリフトが見えた瞬間、
涙ぐんでしまいました。

100%うれし涙のせいで、目を赤くしながらゴールしました。





2日経った今でも、脚のいたるところが筋肉痛です。
階段の登り降りで激痛がはしります。
ここまで長引いた経験は初めてです。
特に、ロードに必要な部位と異なる前側の筋肉が全滅。
今後、鍛え甲斐がありそうです。


筋肉痛に比べて、精神的には楽しいことばかりでした。
気持ちが良いランナーたちと、
雨上がりの気持ちいい青空の下で、
10時間も過ごせた、ということ。


転職が決定した後にエントリーしました。
退職に向けた整理中、有給休暇中、現在の職場に勤務してからと、
日常生活が大きく変化する期間でしたが、
このレースに向けて一貫したトレーニングをしてきました。
体調を崩すことなく、最高の状態で参加できたのは幸せでした。


ロングトレイルが自分好みであることは間違いないようです。
まだまだ見えていない限界を見てみたいと感じます。
かつて南海で活躍した名選手、門田博光は
たしか40歳でホームラン王に輝き、不惑と称されました。

 40にして迷わず、遊ぶ

家庭だけは顧みながら、ガンガン走りたいと思います。

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